使い方を知るだけでなく、利用者の気持ちを感じる。それによりバリアフリーについて考える視野を持つ、それが車椅子体験の目的です。
今回のリポートでは周南市社会福祉協議会徳山支部で車椅子体験のプログラムを学びました。
お話しをお伺いするのは前回の高齢者疑似体験同様、竹尾さんです。体験ではまず車椅子に対する知識を深めるために各名称について学びました。
ハンドグリップ、ハンドリム、ブレーキ、フットレストなど…それぞれの部分の名称と役割を教えてもらいます。
続いては実践です。自分で車椅子を動かします。直進、後進、曲がるなどの動作を慎重にゆっくりと体験しました。
更に介助される側についての体験も行います。この体験では私は車椅子に座るだけで何もすることはありません。竹尾さんに車椅子を押してもらう、ただそれだけです。スロープ、でこぼこ道、段差。しかし乗っているだけだから…と深く考えずに乗った車椅子は、ほんの少しの高低差で身体が激しく揺れる、腰が浮く、キャスターが引っかかる等、なかなかに大変なものでした。
そして私が一番驚いたのが電話ボックスです。電話ボックスまでの道のりを自走させてもらい向かったのですが…。電話ボックスに入ろうとするその直前に気付いたこと。それは車椅子では電話ボックスに入ることが出来ない、ということでした。竹尾さんにドアを開いてもらっても、車輪を少し上げてみても、何をしても私はそこに入ることができませんでした。体験を通して私が改めて感じたことは、車椅子を利用する人と介助する人の間には、その場の状況を説明する声掛けのようなコミュニケーションが必要なこと、そして私たちが通常気付いていないだけで、車椅子の方たちにとって大変な思いをする場所があるのだな、ということでした。それに気が付き、なんだか悲しい気持ちになっていた時、竹尾さんは段差やでこぼこを解消するのは難しいことだけれど、街の中には普段気が付かないだけで、高齢者や障がい者、誰にとっても利用しやすいことを考えて作られている「ユニバーサルデザイン」というものがある、と教えて下さいました。
それは例えばエレベーター内の鏡やボタンだったり、自動販売機の取り出し口が下の方についていることだったりするのですが、障がいの有無、年齢だけでなく多様な人々が利用しやすいよう、都市や生活環境をデザインする考え方なんだそうです。また竹尾さんは、私たちにも「できること」があること教えてくださいました。それは当たり前ですが、困っている人(車椅子の方でも高齢の方でも…誰でも)を見かけたら、その方たちの目線に立ち、声をかけることです。コロナ禍だったり、ご時世だったりで、なかなか今はそれが難しいことなのかもしれません。けれど誰かが困っている時に即座に気が付くことができる、そして声を掛けることが出来る、そんな人になりたいものだと体験を通して深く感じました。
(井上華織)
この記事の内容を番組でお伝えしています。
番組名 gyutto(ぎゅっと)
放送期間 8月1日(月)~7日(日)
放送時間 ①7時 ②12時 ③18時 ④20時30分
チャンネル 12
アナウンサー 井上華織 木村修太郎
制作 シティーケーブル周南 新周南新聞社 WAVE
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