今年開港100周年を迎えた徳山下松港。船の入出港には様々な機関が関連している。
開港記念碑が向かいにある入船町で、主に通信事業と福祉事業を柱とするのが周南マリコム株式会社。マリタイム・コミュニケーション(海上通信)と、創業当時に流行った .com(ドットコム)を掛けたネーミング。
堀さんは、周南市出身。船乗りだったお父様譲りの海好き。ご自身も世界の海を行き来しようと22歳の時、第一級無線通信士として出光タンカーに入社。大型タンカーで7つの海を航海。20年経った頃、社内ベンチャービジネスの機運が高まり、その後押しで堀さんの挑戦が始まる。
世界中を航海し気付いたのは、地元の徳山下松港は国際貿易港でありながら、船の入港や出港に重要な意味を持ち、何より安心安全な情報を船に届ける無線局がなかったことだった。
堀さんは、周南地域のコンビナート30社に無線局(ポートラジオ局)の重要性と行政への要望を呼びかけた。そして、山口県へ要望書を提出。正式に受託されると同時にシステム充実に着手。現在は、晴海埠頭を目の前に据える徳山ポートビルの3階に、1人が常駐して徳山下松港を中心とした周辺海域を24時間365日見守り続けている。
さらに堀さんの躍進は続く。海上で得たシステムのノウハウを基に陸上でも役立てないかと思案。全国の消防署ではご高齢の方からの誤報も多くあり困っていたことに目を付けた堀さんは、まずは民間で一報を受け、必要な機関へとつなげるシステムを構築。センターでは、看護師を含むオペレーターが24時間体制で主に65歳以上の高齢者宅に設置された緊急通報システム機からの通報をキャッチ。事前の聞き取り調査で得た各利用者の情報は端末で管理されており、通報から瞬時に情報が立ち上がる。そして、利用者にとって必要な機関やサービスへ繋げるのだ。このシステム、現在は62自治体と提携。また、意識朦朧で通報できなくても家電製品の使用状況で安否確認ができるシステムも開発。今後は全国にシステムを広めていきたいと、目を輝かせて語る堀さんは、無邪気な少年のようだ。
50代で始めたダイビングは最高資格のマスタークラス。海好きは根っからだ。国内の旅はキャンピングカーでも楽しんでいるそうだ。
長い道のりも足元の一歩から着実に進めるのが堀さん流。
大好きな海を舞台に、通信士としての知識や経験からのひらめき、また、ニーズをキャッチするその目の付け所が素晴らしい。これからの道のりも楽しみである。
(文:恵雅子 写真:林義明)