島のひと夏。ふぐはえ縄漁発祥の地粭島で行われた貴船神社夏祭りを振り返える。
7月23日、威勢の良い掛け声が島に響き渡った。海の安全と島の発展を願う貴船神社夏祭り。漁師町として成り立ってきた粭島に、300年以上前から続く伝統行事。コロナ禍の影響で開催は4年ぶり。島の内外から期待が集まり、多くの見物客で賑わった。
今回の目玉となったのが、6年ぶりに復活した伝馬船。伝馬船は祭りの花形で、歌と踊りを披露しながら神輿を先導する。神輿は貴船神社からおよそ500メートル離れた御旅所を目指す。
伝馬船の復活に向けた動きは春にスタートした。製造から70年が経ち、水漏れがひどい船体を維持しようと、大がかりな修理が行われた。繊維強化プラスチックを張って浸水を防ぎ、防水性と強度を高める。長時間の祭りに耐えるには、安全性の確保が必要。
貴船神社氏子総代会高松実男会長は「船体がボロボロになっていた。水がどんどん出て。穴を塞いでいたがそれどころじゃなかった」と話す。
祭りの一週間前には、祭りを管理する氏子総代会や地元企業の社員らが集まって、伝馬船の搬出作業が行われた。大型のクレーン車を使った大がかりな作業を経て、伝馬船は無事に海へと運び出された。
氏子総代会のメンバーは「昔を思い出す。あの樽の上でよく踊った。やっぱり伝馬船が出ないと祭りじゃない」と話す。
海を渡る神輿と伝馬船。この二つが揃う姿が、島の人々の記憶に焼き付いている。神輿を担ぐ男衆は、島の住民だけでは足りず、出身者や祭りに賛同する島外の協力者の手で成り立っている。
多くのカメラが向けられた貴船神社夏祭り。普段は穏やかな島が、この日ばかりは賑やかだった。
■特集を動画でご覧ください。
地域の情報などお寄せください。
ccstv@ccsnet.ne.jp